1888年の創立以来、歴代、錚々たる指揮者が名を連ねる、オランダのアムステルダム・コンセルトへボウ・オーケストラ。1988年の創立100周年には、ロイヤルの冠がついた。
映画は、2013年、楽団創立125周年を記念したワールド・ツアーを記録する。世界の30都市で、45回のコンサート。一度も行ったことのない南アフリカ、オーストラリアが含まれる。アルゼンチンとブラジルは、15年ぶりになる。また、ロシアには1974年以来、2度目の訪問。長く、ロシアに行かなかったのは、1978年、アムステルダムでコンセルトへボウの客演指揮の際、キリル・コンドラシンが亡命した事件があったせいだろう。
全編、有名な曲が、数多く流れる。指揮は、6代目の首席指揮者、マリス・ヤンソンスのほか、アントニオ・パッパーノ、シャルル・デュトワ、アイナルス・ルビキスが登場する。それぞれの音楽は、もっと長く聴いていたいところ。圧巻は、マリス・ヤンソンスの指揮になるショスタコーヴィチの交響曲第10番の第2、第3楽章と、楽団員によるバッハの「マタイ受難曲」からのアリア「愛によりわが救い主は死に給わんとす」だ。
単なる、有名オーケストラの演奏旅行の記録映画ではない。世界の悲惨な歴史や現実が、背景に見え隠れする。それでも、音楽を通して、人種を超え、人と人が理解しあう大いさを訴える。

銀座三越で世界から注目を集めるトーキョーポップカルチャーをクローズアップする「ディスカバートーキョー」が2月2日（火）より開催される。

ハンガリーの映画監督、タル・ベーラの「倫敦から来た男」の助監督を務めたネメシュ・ラースローの長編デビュー作「サウルの息子」。第68回のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で、無名の新人監督でありながらグランプリを獲得した。
舞台は、1944年、ドイツが占領したポーランドのアウシュヴィッツにあるビルケナウ強制収容所。ハンガリー系ユダヤ人のサウルという中年男が、同じユダヤ系の人達の死体を処理する、ゾンダーコマンドという特殊部隊いる。
サウルは、ガス室で、かろうじて生きている息子らしき少年を発見する。少年は、軍医によって、あっさりと殺されてしまう。その少年を土葬すべく死体を盗みだし、袋に入れて隠匿し、ユダヤ教のラビを見つけ、収容所内を奔走することになる。

ウジンは、18歳のある日から、毎日目覚めるたびに、別の人間に変身してしまう。
毎日、姿かたちが変化するウジンは、インターネット経由でのみ仕事を受ける家具デザイナー。今日のウジンは、メガネをかけた、リッチそうな青年である。ウジンは、よく出かけているアンティークの家具専門店で、ひとりの女性、イスを見初める。連日、イスの店に通うウジン。
毎日姿を変えるウジンとイスの愛の行方は……

昨年の東京フィルメックスで、観客賞を受けた映画「最愛の子」
映画の前半は、離婚した夫婦が誘拐された息子を探す。後半は、育てた息子を探す母親の悲哀が、つい最近の中国の社会事情を背景に綴られる。
子を思う親の愛の形を借りた、ピーター・チャンの奥深いメッセージのこもった、力作。

輪廻転生がテーマのサスペンス、映画の前半は、緑に満ちた地方の病院。後半は、近代的な病院である。医者同士や、医者と患者の対話が、ほぼ似たような形で反復される。
色々な登場人物が出てくるが、事件といえるような出来事は、何も起こらない。
過去の記憶や愛をめぐっての途切れ途切れの会話があるが、一貫性は、ほぼ、無い。シーン、シーンが移り変わり記憶辿る。

ふと日常から離れて、「映画の世界」で遊ぶ余裕を持ちたいもの。例年とおり、最近発売されたDVD映画から、「これはおすすめ」という5作品を簡単にご紹介します。

1915年ころ、オスマン・トルコで、100万人とも150万人ともいわれているアルメニア人が虐殺された史実が映画の背景にある。
虐殺を生き残ったものの、声を無くした男が、双子の娘を探す旅を通して、アルメニア人虐殺の歴史を検証する。
声そのものが出せない。それでも、過酷な現実に立ち向かい、なんとか生き延びようとする。砂漠の美しさと過酷な現実。ファティ・アキン監督の思想、美学がぎっしりと詰まっている。

長崎にある大村湾。ここにある小さな個人所有の島「竹ノ島」が今回の舞台だ。荒れ果てていた島を2004年に購入した男性が、オリーブの木に魅せられて、コツコツと木を植えるところからこの物語がはじまる。地道に植え続け、その数なんと500本にもなった！　

映画は、年代順に全7章に分かれている。
ヴィオレットがどのような女性、作家だったかを、映画は丁寧に描いていく。貪欲で、わがままで、勝気。同棲した男色の作家モーリス・サックスや、ボーヴォワールに触発され、私生活を元にした小説を書き続ける。
ボーヴォワールやジュネたちが絶賛して、出版されても、さほどの反響はない。ボーヴォワールは、ヴィオレットの書いた作品を褒めたけれど、ヴィオレットと親しくなろうとはしない。むしろ、冷淡に突き放していく。映画は、ヴィオレットの苦悩やあせりを、濃密に綴っていく。

人情コメディのお手本のような映画。
以前、高級コールガールをしていたハリウッドの新進女優イジーが、インタビューを受ける。
いささか天然気味のイジーは、コールガール時代に、ある舞台演出家から呼ばれたときのことを語り始める。
それは、映画好きの少女が、映画女優になっていくという、いわばシンデレラ・ストーリー。
見終わって、笑い、心ほのぼの、暖かくなる。

「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」は、サグラダファミリアが現在、どのように建築が進められているかを、多くの人の証言で綴っていく。それぞれの立場から、サグラダ・ファミリアを語り、ガウディを語る。この発言が、熱い思いに満ちている。いずれも含蓄があり、示唆に富む。

どこかのある国。独裁政権の大統領が，幼い孫と戯れている。大統領は、合図ひとつで、町中の電気を消したり、点けたりする。孫は驚く。大統領と孫が遊んでいるうちに、突然、電気が点かなくなる。クーデターが勃発する。

町じゅうが大騒ぎである。民衆は暴れ狂い、あちこちに、大統領を殺せといったポスターが貼ってある。兵士たちは、いまや大統領の命令は無視、クーデターに加担する。大統領の首に、賞金が懸かる。もはや、逃げるしかない。大統領と孫は変装し、宮殿をぬけだし、国境のある海辺の町を目指す。

何度も、正体が見破られそうになるなか、大統領と孫は、海辺を目指していく。大統領と幼い孫を待ち受けている現実とは・・・。

ドウロ河に近い小さな町。高台にある富豪の邸宅ポルタシュ館で、イザクは若くして亡くなった当主の娘アンジェリカの写真を撮る事になる。

イザクは、部屋の中央に安置されているアンジェリカを見つめる。その美しさに、イザクは魅せられてしまう。白い衣装で、青いソファに横たわっているアンジェリカを撮るよう、母親が依頼する。イザクは、アンジェエリカにカメラを向ける。イザクがピントを合わせようとしたその時、アンジェリカは目をあけ、微笑む。イザクは驚き、唖然としながら、なんとか撮影を終える。

夜、イザクは、アンジェリカの写真を見つめる。なんと、バルコニーに、アンジェリカがいる。ふたりは抱き合い、空中を泳ぐ。木立ちの間を抜け、ブドウ畑や河の上を浮遊していく。河に浮かぶ一輪の花を手にとるイザク。イザクは、空中からいきなり下降する。「アンジェリカ！」と叫んだイザクは、目を覚ます。「なんだ今のは。奇妙な夢か、現実か」とイザク。

アンジェリカのことが夢なのか、現実なのか、イザクには分からない。そこに、下宿の食堂で、ある事件が起こる。イザクはいったいどうなるのだろうか。