木に見立てたロールケーキの「ブッシュ・ド・ノエル」や、甘いパンのようなドイツの伝統菓子「シュトレン」など、最近では日本でも世界各国のクリスマススイーツを食べられるようになりました。ですが、日本ではまだあまり知られていないクリスマス菓子も世界にはたくさん! ネクストブレイクの可能性を秘めた、世界各国のユニークなクリスマス菓子をご紹介します。
ドイツの「ヘクセンハウス」は魔女の家
「ヘクセン」とはドイツ語で「魔女の」という意味。グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」で子どもたちが迷い込んだ、お菓子でできた魔女の家を覚えていますか? 固めのジンジャーブレッドなどを組み合わせてミニチュアの一軒家の形に作ったこのお菓子は、まさにリアル「お菓子の家」。ドイツではクリスマスの時期になるとこのヘクセンハウスを作って飾っておき、クリスマスが過ぎたら壊して食べるという伝統があります。最近では日本でもオリジナルのヘクセンハウスが作れるキットも販売されています。
フィンランドの星形パイ「ヨウルトルットゥ」
まるで呪文のような響きを持つ「ヨウルトルットゥ」とは、フィンランド語で「クリスマス・パイ」のこと。クリスマスツリーのてっぺんに飾る星をかたどった、星の形のパイです。パイ生地を正方形に切り、4ヶ所に切り込みを入れたら、中央にプルーンなど酸味のあるジャムをのせ、星の形に整えて焼き上げればできあがり。聖夜は家族みんなでこのパイを食べるのがフィンランド流のクリスマスです。
スイスのクリスマスクッキー「ツィームトシュテルン」
同じく星形といえば、スイスに「ツィームトシュテルン」というお菓子もあります。こちらはマジパンとアーモンドプードル、粉糖、卵白をあわせて焼き、仕上げにグラス・ロワイヤル(卵白、粉糖、レモン汁を練ったアイシングの一種)で表面を白くコーティングした星形のクリスマスクッキー。スイスでは12月に入ると、あちこちのお菓子屋さんや家でこのツィームトシュテルンがツリーや窓辺に飾られます。
さて、あなたはいくつ知っていましたか? 世界にはまだまだ知られざるクリスマス菓子がたくさんあります。次回はスウェーデン、オランダ、スペインのクリスマス菓子をご紹介します。
参考文献:『おいしいスイーツの事典』成美堂出版
大きなかたまり肉をオーブンでじっくり焼いたローストビーフは、クリスマスディナーにもぴったり! 見た目の華やかさ、大人数でも切り分けられること、温かくても冷たくてもおいしく食べられるなど、ローストチキンはパーティー料理にふさわしい条件を満たしているイギリスの伝統料理です。
なぜ糸でしばってから焼くの?
ローストビーフを焼く前に欠かせない手順は、タコ糸で縛ること。肉は加熱すると、繊維方向に縮む性質を持っています。たとえひとかたまりの肉でも、繊維の長さや密度の違いによって縮み方がまちまちになってしまうもの。そうなると火の通りが均一にならず、焼き上がったときの形も崩れてしまいます。タコ糸などでギュッとしっかりしばることで、肉が外側から支えられ、形の整ったきれいなローストビーフが焼き上がります。
オーブンで加熱中に焼き油をかける
ローストチキンを焼くときと同様に、ローストビーフを焼くときも、途中で肉から滲み出た油を2~3回ほど回しかけながら焼きましょう。肉の表面がコーティングされ、水分の蒸発を防いで赤身のやわらかさがキープできます。
なぜ冷めてから切り分けるべきなの?
焼き上がってすぐの温かい状態で食べてももちろんおいしいですが、肉のうま味をしっかり味わいたいなら少し時間を置いてから食べることをおすすめします。焼き上がったばかりの肉は、まだ繊維が縮んでいる状態にあるため、ナイフを入れて切り分けるとうま味たっぷりの肉汁がドッと流れ出てしまいます。肉のうま味を逃がさないようにするためには、しばらく寝かせて肉の内部の温度を下げること。繊維が多少のびることで肉汁がそこに馴染むので、切り分けてもうま味が損なわれません。短くても30分、できれば一晩は寝かせておきましょう。
本場では薄くスライスしてグレービーソースで食べるのが一般的ですが、和風のソースでアレンジすれば年配の方でもさっぱりおいしく食べられます。残ったお肉は翌日以降、パンに挟んでサンドイッチにしたり、生野菜とあわせてボリュームのあるサラダにしても。アレンジがきくので今の時期に作っておけば、年末年始に重宝すること間違いなしのごちそうです。
参考文献:『料理 なぜそうすると美味しくなるの?』服部幸應/監修 河出書房新社 『うまい!をつくる料理100のコツ「焼く」』主婦の友社
おすすめのレシピ
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「おやまあ、フルーツケーキの支度にかかるにはもってこいのお天気だよ!」
クリスマスの足音が聞こえてくる冬のある日、幼い少年とその親友であるおばあちゃんは、フルーツケーキを作る準備に取り掛かります。必要な材料は、小麦粉とバター、卵、どっさりのスパイスとさくらんぼ、シトロン、しょうが、バニラ、パイナップルに、オレンジの皮、干しぶどう、くるみ、それから高価なウイスキー! 2人はなけなしのお金を全部はたいてなんとか材料を揃え、31本(!)ものフルーツケーキを焼くのですが――。
これはアメリカの作家、トルーマン・カポーティが著した『クリスマスの思い出』という短編小説のあらすじです。1956年に発表されたこの作品は、少年と祖母が過ごした最後のクリスマスの風景を描いた、切なくも美しい物語。アメリカでは教科書にも採用され、クリスマスシーズンになると今なお各地で朗読されるほど長きにわたって愛されている小説です。
物語のなかで少年とおばあちゃんが作る「フルーツケーキ」とは、ドライフルーツをたっぷり入れた今でいうところのパウンドケーキのこと。ケークアングレ(Cake Anglais=イギリスの菓子)とも呼ばれるこのケーキは、クリスマスプディングをルーツに持つイギリス伝統の焼き菓子です。
『クリスマスの思い出』に登場する少年とおばあちゃんのように、欧米ではクリスマスには洋酒に漬け込んだドライフルーツをたっぷり入れたフルーツケーキを焼くのが習わしでした。祖母から母へ、母から娘へと、各家庭でオリジナルのレシピが受け継がれていったといわれています。
また、本場イギリスでは「フルーツケーキ」というひとくくりにまとめた呼び方ではなく、チェリーケーキ、プラムケーキというように中に入っているドライフルーツの名前で呼ぶのが一般的。ラムレーズンやドライプルーンの紫、ドライアプリコットの赤、アンゼリカ(茎を砂糖で煮詰めたもの)の緑と、フルーツをたっぷり使ってカラフルな色合いに仕上げたフルーツケーキは、どっしり重い口当たりと濃厚なバターの風味が特徴。日持ちするので、お土産にもぴったりです。
さて、少年とおばあちゃんは31本ものフルーツケーキを誰のために焼いたのでしょう? 興味がある人はぜひ『クリスマスの思い出』を読んで確かめてみてください。少年とおばあちゃんのいとおしい思い出に静かに涙した後、きっとフルーツケーキが食べたくなるはずです。
参考文献:『おいしいスイーツの事典』成美堂出版 『お菓子の由来物語』猫井登