おせち料理に欠かせない昆布巻きをはじめ、塩昆布、昆布茶、松前漬、昆布の佃煮、とろろ昆布におしゃぶり昆布、味噌汁のダシとしてなど。日本人と長いお付き合いの昆布は、用途もさまざまで多くの加工製品になっています。ところで買ってからしばらくすると、昆布の表面からカビが生えたように「白い粉」が吹いてきませんか? あの白い粉は体にいいもの、それとも悪いものなのでしょうか?
表面に吹く白い粉は「うま味」のもと
昆布の表面に出てくる白い粉は、うま味成分であるグルタミン酸の一種でマンニットです。昆布を長期間保存していると、乾燥状態だった昆布が空気中の水分を吸い取るようになります。その水分が今度は昆布から出て行く時に、一緒に栄養分も外へ出ていこうと働くのです。ところが蒸発して消える水と違って、栄養分は蒸発せずに昆布の表面に残ってしまいます。つまり、白い粉の正体はグルタミン酸マンニット、昆布の「うま味」のもとなのです。体に悪い成分は含まれていませんので、洗い流さず、軽くぬれ布巾で拭く程度で十分。拭いてしまうと昆布の甘味成分が失われてしまうので、気にせずそのままの状態で使うという人もいます。
昆布に賞味期限はない?
「昆布はきちんと保管しておけば賞味期限はない!」という意見もあるほど、直射日光や湿気を避け、乾燥した場所で保管すれば、風味を損なうことなく2~3年の長期保存にも耐えられます。使いやすいよう、15cmくらいの長さに切って缶や瓶などに入れ、常温、または冷蔵庫で保管しましょう。ただし、白い粉(マンニット)と勘違いして、カビが生えた昆布を食べないように要注意! 昆布は水分を含んでしまうと、短時間で白カビが生えてダメになってしまいます。もし多少の湿気を含んでしまったら、軽く天日干ししてから再度保存してください。(TEXT:料理サプリ編集部)
参考文献:『だし=うま味の事典』 星名桂治ほか 東京堂出版
リング状の揚げパン。身も蓋もない言い方ですが、つまりはそれがドーナッツの定義。子どもが大好きなおやつの定番でありながら、コーヒーとの相性の良さから大人からも愛されているドーナッツ。粉砂糖がまぶされたもの、おもて面にハチミツやチョコレートを塗ったもの、とろりとアイシングがかかったものなど、トッピングのバリエーションは無限大です。
諸説ありすぎる「穴」の由来
ところでドーナッツにはなぜ「穴」が開いているのか、考えたことはありますか? 実はドーナッツの穴に関してはさまざまな由来があります。
一番古い「穴」の逸話は17世紀のオランダ。くるみを生地の真ん中にのせたオランダの揚げ菓子「オリーボール」を作るはずが、たまたまくるみが手に入らなかったから真ん中に穴を開けたものがドーナッツの原型である、という説が有名です。
その他にも、アメリカでは先住民であるインディアンの放った矢がたまたまパン生地の真ん中にあたり、油の中に落ちたのが始まりという説、船乗りのハンソン・グレゴリーという人物が船の操舵輪にパンを引っ掛けるため穴を開けたという説、子どもだったグレゴリーが母が作った揚げパンがいつも生焼けだったことから中心に穴を開けることを思いついたという説など、実にさまざまな説が残っています。
アジア圏はなぜか穴なしタイプ
ドーナッツは大きく分けて3つのタイプに分類されます。パン酵母で生地を膨らませる「イーストドーナッツ」、ベーキングパウダーで生地を膨らませる「ケーキドーナッツ」、そしてシュー生地の水蒸気で生地を膨らませる「クルーラードーナッツ」。一方で、ドーナッツとよく似た揚げ菓子として、沖縄名物のサーターアンダーギーや、中国の揚げ菓子「開口笑(カイコウシャオ)」などがあります。これらはいずれも材料・作り方はドーナッツとほぼ同じ。違いは穴があるかないかの一点だけなのですが、「穴がなければドーナッツじゃない!」と思う人のほうが多いのではないでしょうか。やはりドーナッツの最大の魅力は、あの「穴」なのかもしれません。(TEXT:料理サプリ編集部)
参考文献:『お菓子の由来物語』 猫井登 幻冬舎ルネッサンス/『おいしいスイーツの事典』成美堂出版
野山に住む猿たちは秋の満月の夜、熟れた山ぶどうを岩屋木の穴などに詰め込んで発酵させ、次の満月の晩に再び集まって酒盛りをする。江戸時代の書物にはそんな「猿酒(さるざけ)」の伝説が記されています。
猿酒とは果実が自然に発酵してお酒になったもの、つまり果実酒のこと。洋の東西を問わず、かつて森や野山に緑が満ちていた時代は完熟した果実をかためて置いておくと、山中で繁殖している天然酵母が付着し、糖分がブツブツと発酵して簡単に酒ができたのだそう。つまり、猿の手を借りなくても、果実酒は自然発生的にできる場合が少なくなかったのです。
江戸時代には薬として大流行
江戸の人々は風邪が流行る冬に備えて、秋のうちからせっせと果実酒作りに精を出していました。食に関する百科事典ともいえる『本朝食鑑』によると、当時の人々は手の込んだ色とりどりの果実酒を薬酒(くすりざけ)として健康のために飲んでいたのだとか。代表的な薬酒としては、ぶどう酒、つまりワインを筆頭に、桑の実で作る桑酒、みかん酒、ヤマモモで作る揚梅酒、ライチの仲間であるリュウガンから作る龍眼酒、スイカズラから作る忍冬酒など、現代に負けず劣らずさまざまな果実を漬け込んでいたことが文献からわかっています。
縄文人も果実酒を飲んでいた
さらに時代を遡ると、縄文時代の人々も果実酒を飲んでいたであろうことがわかっています。縄文中期の遺跡から多数発掘されている大型の樽状土器は、中から山ぶどうやガマズミ(スイカズラ科の赤い果実をつける樹木)の種子が見つかっており、酒造りに用いられていたという説が有力。さらに縄文後期の発掘品として、とっくり型の土器やカップ状の土器なども見つかっています。縄文人も一日の終わりには山ぶどう酒やガマズミ酒を土器に注ぎ、仲間同士で楽しく飲んでいたのかもしれませんね。(TEXT:料理サプリ編集部)
参考文献:『大江戸食べもの歳時記』 永山久夫 新潮文庫
おすすめのレシピ
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シュー皮とカスタードクリームのシンプルな組み合わせで愛される洋菓子の定番、シュークリーム。ところで実はこのシュークリーム、フランスでもアメリカでも通じない日本だけの呼び名ということは知っていましたか?
「クリーム」は英語ですが、「シュー」とはフランス語でキャベツの意。膨らんだ形がキャベツに似ていることからそう呼ばれるようになりました。つまりシュークリームはフランス語+英語を独自に組み合わせた日本だけで使われている和製語だということ。私たちがシュークリームと呼んでいるあのお菓子は、フランス語では「シュー・ア・ラ・クレーム」、英語では「クリーム・パフ」といいます。
なぜシュー皮の生地は膨らむのか?
シュー皮は焼き上がると中に大きな“空洞”ができる、他の菓子とはちょっと違う生地です。ゴム風船のようなふんわりした膨らみは、どうやって生まれるのでしょう? シュー皮を作るときは鍋に水とバターを入れ、沸騰させたところに小麦粉を混ぜます。そうすることで小麦粉に熱が入り、糊状になります。これが第一段階。さらにそこへ卵を加えると、粘りのあるルー状の生地ができあがります。このねっとりした生地をオーブンで加熱すると、生地に含まれていた水分が熱で蒸発して外へ出ていこうとする力で生地が押し広げられ、ふんわりと膨らむというわけ。これがシュー皮にできる“空洞”の秘密です。
幕末の日本に伝来したシュークリーム
日本にシュークリームが伝わったのは意外と早く、幕末の頃。横浜に西洋菓子店を開いたフランス人のパティシエが作ったのが最初だといわれています。ただ、そこから庶民にも食べられるようになったのは、昭和30年を過ぎた頃から。なぜそんなにもブランクがあったのでしょう? それはシュークリームが他の焼き菓子と違って、要冷蔵のお菓子だったから。冷蔵庫が一般家庭に普及するようになってようやくシュークリームも市民権を得るようになったのです。(TEXT:料理サプリ編集部)
参考文献:『お菓子の由来物語』 猫井登 幻冬舎ルネッサンス/『おいしいスイーツの事典』成美堂出版
食べ物に気を使い、健康志向が高い人たちから人気がないのが、食品添加物の“保存料”。スーパーマーケットなどで食品を選ぶときにラベルを見て「保存料」が入っていたら買わないという人もいるのではないでしょうか。食べ物を腐らせにくくする薬品――そんなイメージから、なんとなく保存料を嫌なものに感じてしまうのでしょう。では、保存料とは実際にどんなものなのか、日本で主に使われている種類をご紹介します。
ソルビン酸――世界でもっとも広く用いられている保存料。ナナカマドの果実が腐敗に強いことから発見された成分。酸性の食品でカビや酵母、耐熱芽胞菌の続食を抑える。脂肪を構成する成分である脂肪酸の一種で化学合成によって製造。体内ではほかの脂肪酸と同じように代謝されて二酸化炭素と水に分解。
安息香酸――果物に多く含まれている酸の一種。酸性の食品のカビや酵母の増殖を抑える。清涼飲料水などに用いられることが多い。
白子タンパク抽出物――サケやニシンの精巣(白子)に静菌作用があることから発見されたタンパク質。中性~アルカリ性の食品で多くの菌や耐熱性菌の増殖を抑える。ほかのタンパク質と同じように人の小腸で分解される。
プロピオン酸――味噌や醤油にもともと含まれ、人の体内の腸内細菌でも作られている。香気成分。酸性の食品、パンなどによく使われる。
酢酸ナトリウム――正確には保存料ではなく、日持ち向上剤。もともと食酢の成分で細菌、微生物の増殖を抑える効果がある。ハンバーグやからあげ、惣菜などに用いられることが多い。酢酸ナトリウム、pH調整剤、酸味料などの名称で表示される。
グリシン――カニなどの魚介類のうまみの成分でもあるアミノ酸の一種。調味料として利用されることもあり、酢酸ナトリウムと同じように保存料ではないが、一部の菌や耐熱性菌を抑える効果があり、日持ち向上剤としてよく用いられる。グリシン、pH調整剤、酸味料などの名称で表示される。
こうした保存料(日持ち向上剤)は菌の種類や食品のpHによって効果の高いものが異なり、何より食品そのものの味を損なわないために最低限のものをさまざまな組み合わせを考えて使われています。なんとなく健康に悪そうなイメージがありますが、逆に食品の安全と品質を守るための技術。安全性の評価もしっかり取り決められており、無闇に怖がる必要はないものなのです。(TEXT:料理サプリ編集部)
お腹を空気でパンパンに膨らませた姿が大変にユーモラスでありながら、その身の美味しさと恐ろしい毒を持っていることで知られる魚のフグ。その名前は平安時代の日本では、「ふくらはぎ」や「袋」といったふくらむものやふくらんだ形のものを表すのに「ふく」という言葉を使っており、魚のフグもそのお腹をふくらませた様子から「ふく」と呼ばれるようになったそうです。やがて、それが変化して「ふぐ」となり、全国に広がって定着していきました。現在でもふぐの本場で知られる下関周辺では「ふく」と呼ばれることもあります。これは「ふく」が福につながるということで縁起がいいという意味合いもあるようです。
このふぐは漢字で書くと「河豚」。なぜ海の魚なのに「河」という漢字が使われているのでしょうか。この「河豚」はもともと中国から伝わったものとされています。昔の中国では揚子江や黄河などの河川に生息するフグ科のメフグという種類が一般的に親しまれており、釣り上げたときに豚のように体を膨らませて「ブーブー」という鳴き声のような音を立てることが「河豚」という書き方の由来になったそうです。また、日本と同様に中国でもふぐは美味なことで有名で、「豚」の字には美味や高級といった意味があることから、この漢字を当てたという説もあります。
日本はもともと「布久(ふく)」と書いていましたが、室町時代に中国の「河豚」という書き方が伝わって広まっていったのではないかと言われています。そのほか、ふぐは日本で生まれた漢字で「鰒」と書くこともあります。大阪ではふぐのことを「てっぽう」と呼ぶことがありますが、これは「たまに当たると死ぬ」という洒落に由来しています。実際、ふぐ毒による死亡事故は日本でもときおり発生しています。くれぐれも素人料理をしないようにしましょう。ちなみにふぐの鍋料理「てっちり」は「てっぽうのちり鍋」の意味です。(TEXT:料理サプリ編集部)
どの家庭にもあって、よく料理に使われる調味料のひとつ、酢。この酢は酒とともに人類が最初に作った調味料とされ、紀元前5000年のバビロニアの文献にも記録が残されています。現在、日本で一般的に使われているのはJAS規格で「醸造酢」と定義されている種類で、穀物酢と果実酢に分類されています。
穀物酢の代表として、白米を発酵させて作る「米酢」があります。米酢はクセがあまりないのにコクがあり、匂いが強いことが特徴。寿司や酢の物といった和食にはぴったりで、とくにシメ鯖のように青魚を使った料理との相性は抜群です。ただ、独特の麹の風味もあるために洋風のサラダや白身魚のマリネといった料理にはあまり向きません。サラダドレッシングやマリネの漬け込み汁には、まろやかな酸味のある果実酢の「リンゴ酢」やブドウを原料にした「ワインビネガー」のほうが一般的によく合うとされています。アルコールを添加して醸造した「酒精酢」は、クセと強い風味がなく味も淡白なため、漬け物やショウガの甘酢など、さっぱりした味わいに仕上げたい料理に使われてます。
近年、健康食品としても注目を集めているのが「黒酢」です。これは米酢の一種ですが、米と麹、水をカメに入れて密封し、屋外で1~3年という長い時間をかけてゆっくりと発酵と熟成をさせたもの。見た目が真っ黒なことが大きな特徴。うま味や甘みが強くて酸味はまろやかになっており、独特の濃厚な風味があります。必須アミノ酸やクエン酸を多く含んでいることから、料理にコクや風味を出すための調味料としてだけではなく、飲料などに加工されて利用されることも多くなっています。日本では鹿児島県の福山地方が主産地として知られています。中国にも色が黒い酢がありますが、こちらは米だけなくコーリャンや大麦が使われることも多いようです。
イタリアの白ブドウを原料にした果実酢「バルサミコ酢」も黒酢と同様に色の黒い酢です。このバルサミコ酢も通常で4~6年、長いものは10年以上という長期の熟成によって作られています。熟成期間が長いほど高級とされており、100年を超える超プレミア級のバルサミコ酢も存在します。特徴は芳醇でフルーティーな香りとコク、まろやかな酸味と甘みです。肉料理のソースから、サラダのドレッシング、デザートまで幅広い料理に用いられています。
おすすめのレシピ
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下ごしらえをした野菜や魚介類に和え衣を絡ませる「和えもの」。主に副菜として位置づけられる和えものは、基本的に食材そのものも味や香り、特徴を活かす料理です。和えものを美味しく食べるコツはなんといっても食べる直前に和えて、出来上がったものをすぐ食べること。材料を和えたまま放っておくと、和えものの味はどんどん落ちてしまいます。その理由は時間が経つにつれて、和え衣の水分が食材に浸透し、逆に食材からは水分が外に引き出されていくからです。和え衣の味は薄くなり、食材は歯ざわりがなくなってベショベショに。これでは美味しくなくなって当然です。
和えものを美味しく食べるには食べる直前に和えるのが一番のコツですが、食材の水分を出さないように下ごしらえをちゃんとやることもポイントです。味がまったくついていない生のままだと和え衣の塩分がすぐに食材の水分を引き出して水っぽくなってしまいます。そうならないように食材には事前に塩を振ったり、加熱をして水分が出ないようにしましょう。また、食材と和え衣は両方とも下調理の後、温度が下がってから和えることもコツのひとつ。こうしたひと工夫で食材の内部には和え衣の水分が浸透せず、表面全体をむらなく和え衣が覆ってて美味しく仕上がるようになります。
ちなみに野菜サラダのドレッシングなども和えものと同じように先に食材に絡めてしまうと、時間が経つにつれて野菜の水分が抜けてベショベショになってしまいます。和えものと同じように食べる直前にかけて食べるようにしましょう。
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